「勝達いくみ遺稿集」あとがき

遺稿を整理していたら、大量の手稿があった。当人や家族親族、地域の歴史を伝えるものとなるし、一周忌の供養にもなると思い、遺稿集としてまとめることにした。 その中のノートにこんな詩を見つけた。 新しき年 一、ひとはみな 憩ひ楽しむ 新しき 年の初め…

「留学のいろいろ」刊行

最近留学についての本を出したが、これは、好きな人たちの事績を眺め渡すと、近代史の必然であろうか、その多くに留学体験があったので、それを並べてみたらこうなった、というような自然発生的な成り立ちをしている。 島根県出身者が中心となったのも必然で…

「勝達漢詩集」

(昨年暮れに出した漢詩集の後記) 著者が自選できればよかったのだが、それができかねるため、代わって漢俳を含む125首を選んだ。短歌や俳句なら多少はよしあしもわかるけれど、漢詩の巧拙はてんでわからないので、題材で選んだ。京都や箱根のような誰もが…

テロ? 暗殺?

元首相が殺害された。影響力の大きい人物であったこと、選挙演説中であったこと、銃撃という今の日本ではきわめて珍しい方法であったことで、衝撃的であった。だが、これは「テロ」なのだろうか?「暗殺」なのだろうか? 政治的主張がないところにテロはない…

暖かいシベリア

暑いのが苦手で、冬に雪が降るところでばかりで働いていたが、バンガロールやボルネオでの滞在を経験して、要するにヨーロッパというのは極地地方だとわかった。そこまででないとしても、「暖かいシベリア」というのは妥当な表現であろう。緯度的にも。 チュ…

そんなに鎖国したいのか

カトマンズのタメル地区に、「日本言吾の本3000冊あります/半客頁で買い戻し」「日本の本買います日本の本売ります」などという看板を出し、文庫本を山積みしている古本屋がある。以前はヒマラヤ銀行やノースフェイス、チベット書店などの並ぶ一等地と言っ…

アルツハイマー?

物忘れは昔からの古なじみだが、最近は頻度も程度も上がっていると感じる。人の名前が出てこないのが特にひどくなった。 夢の中でも名前が出てこない。どういう夢だったか忘れたが、森鴎外の系譜に連なる人について考えていて、柳田国男、斎藤茂吉、石川淳、…

「温泉津誌」刊行

温泉津を探りながら世界の深みへ落ち込んでいくようなものを書きたい、と思っていた。立論や断定を避け、類似をあちらこちらに見出す喜びを友に。南方翁に倣って。 はからずもこのコロナ禍で逼塞している間に、不十分ながらそれを一応まとめることができて、…

ポツンと数軒家

コロナ流行以来、これ以外のウィルスが減りでもしたものか、ずっときわめて健康で、風邪ひとつひかなかったのだが、ワクチンを打ったらとたんに頭が痛くなった。「ワクチン風邪」をひいてしまった。頭が痛いと本が読めず、パソコン作業もできない。テレビを…

村の論理、村の倫理

タリバンについてさして知識があるわけではないので、まちがいがあればいつでも訂正する。 最近アフガニスタンのニュース映像で目にしたのは、腐敗した外国の傀儡政権が地生いの勢力によって打倒された光景だ。南ベトナム崩壊と同じ、あるいはかつてのアフガ…

ヒヤミズピック讃

ボルネオにいたとき、ちょうどアジア・マスターズ陸上の大会があり、それに朝原選手らの400メートルリレーチームが出場すると聞いて、見に行った。チームは45歳以上の部で世界記録を出して、みごと優勝した。その記録がどれほどのものかと思って調べてみたら…

五輪組織委員会長職

五輪組織委員会の会長が辞任して、後任をどうするかという話になっている。 辞任に至るきっかけは、ほとんどフレームアップである。コンテクストの無視によって、大した問題でないものが拡大されてしまった。なるほど失言をしたし、それは不適切であった。「…

家族同姓

前近代において、名前は変わるものであった。近代ではそれは固定されている。筆名芸名や雅号など、あだ名や通称、犯罪や潜行のための偽名など、本名を冒さない範囲でのまたの名があるばかりで、当局に登録した名前は簡単に変えることができない。縛られるの…

山陽快晴、山陰は雪

先日、東京からの帰り道、岡山からの伯備線で、いつもの冬の山陽快晴、山陰積雪の風景を見た。関越道の立往生が発生した寒波のときである。 雲もほとんどない晴れた広島を出たバスが快調に走行し、少しうとうとしかけていたら、やにわに速度を落としはじめ、…

「戦時生活様式」

「新しい生活様式」なんだそうである。 いろいろな実践例が数多く列挙され推奨されているが、その中にこの新型コロナ禍が収束したあとも本当に必要なものはどれだけあるのか。皆無ではない、という程度ではないのか。実のところで言えば、これは臨時生活様式…

テレビについていくつか

ものごころついたときからうちにテレビがあり、ずっと見てきた。テレビ受像機がない状態でなければ、何かしらは見ていた。テレビは24時間いろいろな番組をやっている。各人の好みによって何を見てもいいし、何を見なくてもいいし、全然見なくてもいいどころ…

新型コロナに関する疑問

私は素人である。医学の専門知識などまったくない。そんな人間がわずかな情報から常識のみによってこの病気について考えることにする。素人の寝言など聞きたくなければ、読まずにすませてほしい。 この新型コロナは「コーカソイド・キラー」であるようだ。こ…

札幌東京マラソン

いささか旧聞だが、IOCによる強引なマラソンの開催地変更という事件があり、それについていろいろな意見があった。 いわく、一生懸命準備をしてきたのに、IOCがそれを覆して一方的に決定し押しつけるのは不愉快だ。同意する。 いわく、夏にやるのが根本的な…

だめなのは本だけか?

だめな本を2冊読んでしまった。「韓国人のまっかなホント」(金両基著、マクミランランゲージハウス、2000)と「韓国人とつきあう法」(大崎正瑠著、ちくま新書、1998)である。 「まっかなホント」シリーズはおもしろく、いくつかを楽しく読んだ。外国人か…

人は権力闘争を愛す

あの日馬富士貴ノ岩の事件をめぐる貴乃花の騒動以来、女子レスリング、アマチュアボクシング、女子体操と、スポーツ界の騒動が続いている(日大アメフトの悪質ファウルというのもあったが、あれは競技中の事件であるから、これらの場外騒動とは全然種類が違…

獣種差別

ソウル五輪のときよりはずっと静かだったようだが、平昌五輪に際してもやはり犬肉が問題になった。だが、人を食いはすまいし、何を食べようがかまわないではないか。日本人として犬を食べるのは趣味のよいことだとは思わないが、そんな悪食の連中はバカにし…

田舎観光のために

石見地域の観光業ははかばかしくない。近年海外から日本へ来る観光客の数が驚くほど増えていて、できればそれを招き寄せたいものだが、この地域には観光資源がほとんどない。わずかに津和野や石見銀山があるくらいで、それも石見全体から見れば偏った位置に…

一時避難

ちょっとばかり離れていた中国にまたもどってきてみると、前には使えていたはてなブログが閲覧も投稿もできなくなっていた。そのほかにもいろいろ閲覧できないブログがある。それで、投稿できるこのブログ(閲覧はできないようだが)に一時的に避難すること…

調査かどうかは知らないが

「一行」(いちぎょう・いっこう)のように、二通りの読み方のできる熟語がある。「気色」もそのひとつで、「きしょく・けしき」というふたつの読みがあり、意味もやや違う。だが、今では「きしょく」は「気色悪い」、「けしき」は「気色ばむ」という慣用句…

探偵小説ベスト10

・ミルン「赤い館の秘密」 探偵小説とはどんなものか知りたければ、これを思い浮かべればいい。典型的であり、完成形であると言っていい。つまり、探偵小説という形式は1921年にもう完成されていて、そのあとは惰性というわけだ。 穏やかなユーモアが好もし…

映画ベスト10

フィクションから降りて久しい。 小説はもとから好きでない。昔は演劇青年だったが、演劇ももはや見ない。昔せっせとよく見た映画も、今は忌避の対象だ。アメリカ映画はとうに軽蔑の対象となりはて、ヨーロッパ映画も早くに見るのをやめた。東欧・ロシア映画…

牛と山川草木と

先日知人が訪ねて来てくれたが、到着時間は7時半を過ぎる。温泉の共同浴場は9時(!)に閉まるので、夕食は駅弁を買って食べてくるように言った。 だが、山陰線は下関から出雲市まで駅弁なんか売ってないし、車内販売もない。ここらを走る特急は2両編成なので…

北朝鮮とボランティア

私は北朝鮮のミサイル実験を断固として支持するものである。まわりの国すべてがミサイルを持っているのに、北朝鮮のみがミサイルを持ってはならず、開発をしてはならないというのはわけがわからない。自分はピストルを突きつけておいて、お前はピストルを持…

フクシマをもっと人災にするのか

「管おろし」だそうである。だが、彼ではどうしてだめなのか、よくわからない。むろん、あの人が宰相の器だとは思えないし、ましてこんな時の総理にふさわしいとは毫も思わない。しかし、彼以前の首相や次の首相候補に名前の挙がる人の顔を思い浮かべて、彼…

さくらさんはどんな歌をうたうのか

寅さん映画で、寅さんが夜遅く酔っ払った飲み友達をとらやに連れてきて、さくらに何か歌えと命じる場面があった。強いられてさくらは学校唱歌を歌った。それを妙によく覚えている。寅さんはそのあといたく反省する(「あとで反省しなければならないようなこ…