漢字しりとり・その3

A:きょうは弁論大会です。 B:大会の前には会議をします。 A:会議をして議論します。 B:議論には論理が必要です。 A:論理があれば理解できます。 B:理解して解決します。 A:解決して決定します。 B:私はてんぷら定食が食べたいです。 A:どうして急に…

漢字しりとり・その2

A:日本へ行きたくて、日本語を勉強しています。 B:日本語は本当にむずかしい。 A:当たり前ですよ。外国語だから。 B:前日習ったこともすぐ忘れてしまいます。 A:がんばりましょう。決意は日々新たなり。 B:新宿でラーメンが食べたいです。 A:その前に…

夢中偶成

魯鈍先生轉轉記 魯鈍先生 轉轉記 有人世界有良師 人ある世界には良師あり 寒山熱海爽高原 寒山 熱海 爽高原 又喜又哀生死理 又喜び又哀しむ 生死の理 平仄は合ってないだろう。辞句を並べただけだから。 寝ている間にこんなものができた。巧拙以前に(むろん…

「勝達いくみ遺稿集」あとがき

遺稿を整理していたら、大量の手稿があった。当人や家族親族、地域の歴史を伝えるものとなるし、一周忌の供養にもなると思い、遺稿集としてまとめることにした。 その中のノートにこんな詩を見つけた。 新しき年 一、ひとはみな 憩ひ楽しむ 新しき 年の初め…

スピーチの採点なんてできるのか?

この国のスピーチコンテストの季節が近づいてきた。一大イベントが迫るこの時期、実際のところスピーチの採点なんて本当にできるのかということは真剣に考えられていい。 トーストマスターズでは、こんな項目に分けて審査採点するらしい(100点満点): ・内…

広い世界の片隅に

日本とのつながりの薄いウズベキスタン、国名を言ってもどのくらいの日本人がその存在を知っているか怪しい国の中でも、首都から450キロ、2200メートルの峠越えをしなければたどりつけない地方都市で、20年前に日本語を教えていた。 フェルガナ国立大学の、…

漢字を検索する

与えられた課題は「外国語教育における革新的アプローチ」だが、私の話は革新というより退嬰かもしれない。このIT時代、もはや紙の辞書の需要は薄れているであろうこの時代に、紙の辞書を作ろうというのだから。 日本語は世界でもっともむずかしい書記体系を…

龍の文明圏

龍/ドラゴンは想像上の動物であって、巨大爬虫類、だいたいは大きな蛇で、脚があり、翼はあることもないこともあるが、空を駆けるというところが特徴である。水との関りが深い。キメラ(ライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾から成る)のごとき合成怪物で、中…

見たい、見たい、もどかしい

このところの日本代表は男女ともすごい試合をしているようで、うれしくはあるのだけれど、外国にいるため見られないのがもどかしくてしかたがない。 女子W杯の日本戦は試合翌日にFIFAの配信で見ただけ。見られないよりは数倍いいけれど、結果がわかったあと…

上から下、左から右!

着任したときはもうコースが始まって3か月近くたっていたのに、まだひらがな・カタカナが怪しい。それからひと月たってもさまで改善しないので、業を煮やして、ひらがな・カタカナテストをすると宣言した。「半分できないようならサヨナラだよ!」と脅したが…

石見神譚

神話を考えるときには、かなりの注意が必要だ。伝承がおそろしく錯綜しているからである。見取り図を書けば、以下のようになろう。 まず、「正史正伝」というものがある。中央政府が認めたもので、要するに記紀(『古事記』『日本書紀』)である。これはテキ…

なつかしい村

一 上村に「松尾のおじさん」という人がいて、ときどきうちを訪ねて来ていた。親戚だとは聞いていたが、どういう続柄か知らなかった。最近ようやく祖母のいとこ(祖母の父の甥)だと知った。名前が久朗であることも。 記憶の中の顔立ちはもはやはっきりしな…

春暁という画家

拡張現実ならぬ拡張記憶というものがある。父母、祖父母など、上の世代から聞いた話によってもたらされた記憶である。自分で見たり聞いたりしたわけではないので、不正確でもあれば脚色誇張もまじってはいるだろうが、オーラル・ヒストリーはそれによって作…

WBC雑感

日本が世界大会で優勝してうれしくなくはないのだけども。 ちょっとこれ、おかしくないか。球場は満員、中継の視聴率はすべて40%超え、準決勝イタリア戦では48%だったそうだ。だが、その相手は? 予選リーグで対戦したのは、中国・韓国・チェコ・オースト…

日本語文法ひとり合点

「造化の妙」ということばがある。自然界のもろもろを眺めていると、それがあまりに精巧で調和あるさまにできていることに感動せずにはおれないだろう。自然界だけでなくそれは人界にもあり、文法などがまさにそれだ。体系的で規則的で整然としていて、美し…

「留学のいろいろ」刊行

最近留学についての本を出したが、これは、好きな人たちの事績を眺め渡すと、近代史の必然であろうか、その多くに留学体験があったので、それを並べてみたらこうなった、というような自然発生的な成り立ちをしている。 島根県出身者が中心となったのも必然で…

「勝達漢詩集」

(昨年暮れに出した漢詩集の後記) 著者が自選できればよかったのだが、それができかねるため、代わって漢俳を含む125首を選んだ。短歌や俳句なら多少はよしあしもわかるけれど、漢詩の巧拙はてんでわからないので、題材で選んだ。京都や箱根のような誰もが…

カタールW杯雑感

今回の日本代表には期待していなかった。選手には期待する一方、監督に期待が持てなかったからだ。 あの監督は、決まった時間に決まった選手を同じポジションで交代させるだけで、負けていたり滞ったりしている状況を打開できず、それが大いに不満だった。無…

ヴァガボンドとして、スパイとして

日本野鳥の会の主宰者として知られる中西悟堂(1895-1984)は、松江に住んでいたことがある。普門院の住職として1922年から2年たらずの間であるが。その前には安来の長楽寺にもいた。 悟堂は金沢生まれであるが、生後すぐ東京に移り、そこで成長した。本名…

かるた、かるた、かるた

「あきのたの かりほのいほの…」 いや、困った。声が裏返る。息が続かない。年を取ったか。中国にいたときはちゃんと詠めたのに、と思う。ブランクがいささか長かったと痛感するネパールの教室である。 日本語教師にとってかるたは重要な教材だ。動詞絵カー…

祭りをせんとや生まれけむ

ネパールの首都カトマンドゥの川をへだてた南に、古都パタンがある。そのさらに南4キロほどのところに、人口1万人ばかりのスナコチという村がある。今年初めそこで2つの臨時祭があった。 1月23日、この村のバルクマリ寺院の本尊の像がなくなっているのがわか…

テロ? 暗殺?

元首相が殺害された。影響力の大きい人物であったこと、選挙演説中であったこと、銃撃という今の日本ではきわめて珍しい方法であったことで、衝撃的であった。だが、これは「テロ」なのだろうか?「暗殺」なのだろうか? 政治的主張がないところにテロはない…

明治日本?

カトマンドゥの町を歩いていて目につくのは、私設の小さな学校の多さだ。オーストラリアやイギリスなどの英語圏や日本(最近は韓国も)への留学手続き代行をするコンサルタンシーなるもので、わずかひとつふたつの教室を構え、そこで入学許可を得るための外…

オタクは輝いている

言語は道具である。だからコミュニケーションの手段として学ぶのが正道だ。それはたしかに正道であり王道であるが、覇道でもある。コミュニケーションの道具としての学習法は、要するにジプシーの言語習得である。もちろん、ジプシーは人間のひとつの究極だ…

スピーチコンテストさまざま

さまざまな国でスピーチコンテストが行なわれている。参加者たちのスピーチにはその国の習慣伝統や課題問題が現われていて、なかなかに考えさせられるものがいくつもある。また、そのやりかたには国情が映し出されていて、その点もおもしろい。 トルコの大会…

オンラインは壁なく壁あり

ハバロフスクで教えていていたのは前世紀の終わり、まだ日本語の教師として経験の浅いころだった。大学の教室にはビデオ機器がないが、幸いすぐ近くに日本センターがあったので、そこを借りてビデオを使った授業をしようと手はずを整えたのだけども、始まる…

暖かいシベリア

暑いのが苦手で、冬に雪が降るところでばかりで働いていたが、バンガロールやボルネオでの滞在を経験して、要するにヨーロッパというのは極地地方だとわかった。そこまででないとしても、「暖かいシベリア」というのは妥当な表現であろう。緯度的にも。 チュ…

そんなに鎖国したいのか

カトマンズのタメル地区に、「日本言吾の本3000冊あります/半客頁で買い戻し」「日本の本買います日本の本売ります」などという看板を出し、文庫本を山積みしている古本屋がある。以前はヒマラヤ銀行やノースフェイス、チベット書店などの並ぶ一等地と言っ…

ネパール再訪

もう年金ももらえる歳だから、飛んだり跳ねたりせず田舎でじっとしているのがいいのかもしれないが、それも性に合わず、出かけられるようになったのを幸い、のこのこネパールに来てしまった。外国ではさまざまなささいなことに気づかされ、そのことが不便は…

アルツハイマー?

物忘れは昔からの古なじみだが、最近は頻度も程度も上がっていると感じる。人の名前が出てこないのが特にひどくなった。 夢の中でも名前が出てこない。どういう夢だったか忘れたが、森鴎外の系譜に連なる人について考えていて、柳田国男、斎藤茂吉、石川淳、…