2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

留学のいろいろ (5)

客死 西周らのオランダ留学に同行した職人の大川喜太郎は、留学中に病死した。江戸小石川の名高い宮大工久保田伊三郎もこの留学に選ばれていたが、船中で病気になり、長崎で下船、江戸に帰って間もなく死んだという。士分の留学生は無事帰国したが、それでな…

留学のいろいろ (4)

私的に学ぶ さて、西周らに戻ると、オランダに到着した幕府留学生一行は、ハーグとライデンの二手に分かれた。「ハーグに居つた人々では内田・榎本・沢・田口は和蘭の海軍大尉ヂノウ(Dinoux)に就いて船具・砲術・運用の諸科を学び、榎本は傍ら海軍機関大監…

留学のいろいろ (3)

北京籠城 近代蒸気船の時代には、遣唐使の頃と違い中国渡航自体は難事でないが、渡った先での生活が平穏とは限らない。いや、混乱する清末期では戦乱に遭遇するのは普通にありうることのひとつである。西欧だとて、留学中戦争勃発(第一次・第二次大戦)に立…

留学のいろいろ (2)

珍談 明治ともなれば、難破遭難など、前時代の漂流記もどきの経験はさすがになくなるが(しかし1912年遭難沈没したタイタニック号にも日本人が乗っていた。細野正文[1870−1939]という人で、鉄道院の在外研究員だったから一応留学だ)、整わぬことは多かった。…

留学のいろいろ (1)

漂流者たち 天保12年(1841)正月5日、土佐中浜村の万次郎少年(1827−1898)ら5人の乗り組んだ船は漁に出た。万次郎は当時15歳、9歳のとき父親を亡くし、13、4歳の頃から船に雇われ、魚はずしとして働かなければならなかった。沖で不漁が2日続いたあと、7日…