2010-01-01から1年間の記事一覧

エルトゥグルル・コンプレックス

トルコの弁論大会で土日関係のことになると、学生はみなエルトゥグルル号の話をしはじめる。 エルトゥグルル号というのは、1890年9月16日、使節として日本を訪問の帰途、串本の樫野崎沖で台風のため座礁沈没したフリゲート艦である。587人が死亡、わずか69名…

イスラム暦とイベントと

イスラム教徒が人口の99パーセントを占めるトルコでも、暦は太陽暦を使う。しかし宗教的慣習的な祭日はイスラム暦によっていて、これは太陰暦である。われわれの旧暦は太陰太陽暦で、基本は月の満ち欠けによる太陰暦だが、閏月を設けて太陽暦から離れないよ…

影見姿見

昔、冬に訪れたスイスの村で、家々の戸口ごとにほうきが立てかけてあるのを見て、はてなと思ったことがある。庭ぼうきなら不思議でないが、明らかに室内用のほうきなのだ。魔除けか何かなのだろうか、魔女のほうきのことなども考えて、いぶかしみつつ眺めて…

断食もどき

日本からもどってきた翌日、時差のためか3時半に目がさめてしまった。そのときふと、これはラマザンの朝の食事の時間ではないかと気がついた。断食せよとのはからいかなと思い、のこのこ起き出して朝食をとった。それから今まで日中断食を続けている。 とい…

WM雑感/アイラン片手に

ワールドカップ南アフリカ大会を見るにあたっては、非常に苦労した。寝不足になったというわけではない。トルコは南阿とほとんど時差がないから。今回のワールドカップは、見ようと思ったら全試合だって見られたはずなのである。時差はないし、期間も最初の…

WM雑感/岡田語録

今回のワールドカップの最大の収穫のひとつは、岡田監督のことばであった。「監督の仕事は何かというと、ひとつだけ。決断すること」。 「100メートル走では勝てなくても、400メートルリレーなら勝てる可能性がある」。 「サッカーとは試合が終わらな…

WM雑感/当事者の喜び

日本−カメルーン戦というのがあった。いくらサッカーが好きといっても、ワールドカップの全試合を見る人は少ない。グループリーグが1日3試合あるうち、仕事のつごうで1試合しか見られない場合はもちろん、2試合見られる場合も、まず割愛されそうなのがこ…

「トルシエ」を支持しますか

先日の作文の試験のテーマは「カッパドキアCappadocia」だったのだが、うっかりマーカーをもってくるのを忘れたので、板書せず口で言っただけだった。まずかったな、きっとまちがえるなと思っていたところ、案の定いろいろな「カッパドキア」が出てきた。 「…

癖字補遺

前にくせ字について書いたが、あれをもってトルコの学生ロシアの学生がみんなひどい字を書いていると思われては困る。多くの学生にあんなくせ字があるのは事実だけれど、くせのないきれいな字を書く学生も少なからずいることを言っておかなければ、人を誤る…

癖字起因論

世の中を広く見なければいけない。 ユーラシア以外の大陸には渡ったことがないから、それらについて知見が少ないのは承知だ。だけどユーラシアについちゃおれもちっとは知ってるよ、なんてつもりでおりました。愚かなうぬぼれだ、「ちっと知ってる」のは旧共…

Do it yourself

弁論大会を作ってみよう。それは意外に簡単だ。場所があり、弁士と審査員がいればいい。そのほかにいるものは、あなたの時間と熱意。そして少々のポケットマネー。 場所はある。学校には講堂とか会議室があるから、それを借りればいいだけだ。 弁士はもとよ…

昔は歌を

昔は歌をよみしかど 心やかたくなりにけん 結べる口をほどきしは 学生やさしき心ばへ ひとり居は長くこの身の習ひなり よきおとづれに不意を打たれし三十日あまりひと日弥生のつごもりの空やすずしき人やうれしき人ごとに春はちがへど空晴れて春や昔の春なら…

言文一致と言文乖離(2)

2.口語文法の文語文 田舎で生まれ育ったものだから、狂言や歌舞伎を見たのは大学に入って上京してからである。初めて見て驚いたのは、それがわかるということだ。耳なじみのないことばや言い回しはあるが、基本的にほとんど理解できる。平安朝の文学の朗読…

言文一致と言文乖離(1)

1.「浮雲」時代の日本語 われわれが今こうして書いている文は、「口語文」と言われ、「言文一致」と言われる。 「言文一致」の歴史はまとめられていて、前島密の漢字廃止建議あたりから語りはじめ、明治20年頃から二葉亭四迷・山田美妙によって小説で実践…

トルコと日本 ここが似ている、ここが違う

日本語を習っているトルコ人やトルコに住んでいる日本人にとって、日本とトルコは互いに気になる存在のはずだ。この両者は似ているという話をしばしば聞くが、では日本語を勉強しているトルコ人の学生はどう考えているのだろうか。ということで、「日本(人)…

トルコのための本棚

昔は予習なんかしない生徒だったんだけど。大人になったら、どこかに出かける前にはせっせと予習に励む人間になってしまった。君子豹変、子どものころとうってかわるのは人生においてままあることだ。これをも成長と呼ぶか? トルコには前から興味を持ってい…