日本語

スピーチの採点なんてできるのか?

この国のスピーチコンテストの季節が近づいてきた。一大イベントが迫るこの時期、実際のところスピーチの採点なんて本当にできるのかということは真剣に考えられていい。 トーストマスターズでは、こんな項目に分けて審査採点するらしい(100点満点): ・内…

漢字を検索する

与えられた課題は「外国語教育における革新的アプローチ」だが、私の話は革新というより退嬰かもしれない。このIT時代、もはや紙の辞書の需要は薄れているであろうこの時代に、紙の辞書を作ろうというのだから。 日本語は世界でもっともむずかしい書記体系を…

上から下、左から右!

着任したときはもうコースが始まって3か月近くたっていたのに、まだひらがな・カタカナが怪しい。それからひと月たってもさまで改善しないので、業を煮やして、ひらがな・カタカナテストをすると宣言した。「半分できないようならサヨナラだよ!」と脅したが…

日本語文法ひとり合点

「造化の妙」ということばがある。自然界のもろもろを眺めていると、それがあまりに精巧で調和あるさまにできていることに感動せずにはおれないだろう。自然界だけでなくそれは人界にもあり、文法などがまさにそれだ。体系的で規則的で整然としていて、美し…

かるた、かるた、かるた

「あきのたの かりほのいほの…」 いや、困った。声が裏返る。息が続かない。年を取ったか。中国にいたときはちゃんと詠めたのに、と思う。ブランクがいささか長かったと痛感するネパールの教室である。 日本語教師にとってかるたは重要な教材だ。動詞絵カー…

オタクは輝いている

言語は道具である。だからコミュニケーションの手段として学ぶのが正道だ。それはたしかに正道であり王道であるが、覇道でもある。コミュニケーションの道具としての学習法は、要するにジプシーの言語習得である。もちろん、ジプシーは人間のひとつの究極だ…

スピーチコンテストさまざま

さまざまな国でスピーチコンテストが行なわれている。参加者たちのスピーチにはその国の習慣伝統や課題問題が現われていて、なかなかに考えさせられるものがいくつもある。また、そのやりかたには国情が映し出されていて、その点もおもしろい。 トルコの大会…

世代方言簡易アンケートの調査結果

石見地方の大学生5人と高齢者(60歳以上)5人にアンケートに答えてもらった。ごく簡単なもので、回答者も少なく、予備調査のようなものである。回答者はすべて沿岸部出身者だった。山間部で聞けば結果は多少違ったかもしれない。 1-4は世代差を見るための問…

石見方言への標準語と新方言の浸透

甲南大学方言研究会の「JR山陰本線出雲市-飯浦間グロットグラム集」(2017)というたいへんおもしろい調査報告がある。この研究会は同じ調査方法で「JR山陰本線石見福光―松江―伯耆大山間グロットグラム集」(2008)・「JR山陽本線広島―岡山間グロットグラム…

カタカナかるた

アニメにはまって日本語習うインスタ映えするマレーシアウガンダ ブルンジ アフリカの国エアコン強くてかぜひいたオーストラリアでカンガルーを食べるカメラはいらない スマホがあればキナバル山は富士より高いクチンよいとこ 一度はおいでケーキは食べたい …

ボルネオだより/かなカードを使ったカタカナ習得

今までは大学の日本語学科で教えることがほとんどだったから、この任地に来てとまどうことはいろいろあった。 前任からの申し送り事項に、個々の学生について「音読がまだおぼつかない」だの「やっと音読ができるようになった」だのと注記があるのに「?」と…

漢字を聞き、漢字を話す

村を歩いていて、バスに乗り遅れた。のども渇いていたので、次のバスが来るまでの間食堂で何か飲んでいようと思ったのだが、中国の田舎にコーヒーなどない。それはもとより承知だ。だから、暑くもあったのでコーラにしようと決め、「kola」をくれと言っても…

中国人日本語学習者の漢字能力

世界は漢字圏と非漢字圏から成り、このふたつの間で日本語能力評価は異なる。世界中で行われている日本語能力試験が外国人の日本語力をはかる目安になるのだが、その試験において、非漢字圏では大学の日本語学科生でも2級合格がせいぜいで、これが現実的な目…

短期集中マンツーマン講座

語学の鉄則はふたつある。もっとあるかもしれないが、とりあえず次のふたつを日々感じる。 ひとつは、語学習得でもっとも重要なものはモチベーションであること。語学と言わず、すべての学習の要はこれで、よい教師とは生徒の学習意欲を高められる人のことを…

この地上には漢字圏というものがある

中国の日本語科の新入生は、いきなり新しい名前を得る。「シー・チンピン」(習近平)が「シュウ・キンペイ」になるように。李小龍が「ブルース」なんてまったくの英語名をつけるのと違い、字はそのままで日本語名がつけられてしまうのだから、ちょっと笑っ…

漢字は世界*への扉(*ただし東方の)

インドと中国の違いはたくさんあるが、英語の通用度もそのひとつだ。バンガロールは異常に英語の通じる町で、それ以外のインドでは人々は実はそれほど英語を解さない。何割のインド人が英語が話せるのかわからないけれども、2割という説があり、実際そのくら…

「みんなのトルコ語」

「デファクト・スタンダード」ということばが好きである。別にスタンダードになることを目指していたわけではないのに、ユーザーがそれを支持することによって結果としてスタンダードとなったもの。日本語教育の分野では、「新日本語の基礎」がそうだ。あれ…

「トルシエ」を支持しますか

先日の作文の試験のテーマは「カッパドキアCappadocia」だったのだが、うっかりマーカーをもってくるのを忘れたので、板書せず口で言っただけだった。まずかったな、きっとまちがえるなと思っていたところ、案の定いろいろな「カッパドキア」が出てきた。 「…

癖字補遺

前にくせ字について書いたが、あれをもってトルコの学生ロシアの学生がみんなひどい字を書いていると思われては困る。多くの学生にあんなくせ字があるのは事実だけれど、くせのないきれいな字を書く学生も少なからずいることを言っておかなければ、人を誤る…

癖字起因論

世の中を広く見なければいけない。 ユーラシア以外の大陸には渡ったことがないから、それらについて知見が少ないのは承知だ。だけどユーラシアについちゃおれもちっとは知ってるよ、なんてつもりでおりました。愚かなうぬぼれだ、「ちっと知ってる」のは旧共…

言文一致と言文乖離(2)

2.口語文法の文語文 田舎で生まれ育ったものだから、狂言や歌舞伎を見たのは大学に入って上京してからである。初めて見て驚いたのは、それがわかるということだ。耳なじみのないことばや言い回しはあるが、基本的にほとんど理解できる。平安朝の文学の朗読…

言文一致と言文乖離(1)

1.「浮雲」時代の日本語 われわれが今こうして書いている文は、「口語文」と言われ、「言文一致」と言われる。 「言文一致」の歴史はまとめられていて、前島密の漢字廃止建議あたりから語りはじめ、明治20年頃から二葉亭四迷・山田美妙によって小説で実践…

漢字とかなの法三章

日本語に正書法はあるのか。 正書法がかなづかいのことなら、それは存在する。内閣告示「現代仮名遣い」である。かなは表音文字なのだから、表音原則を最大限尊重しなければならない。その点で現代かなづかいは、助詞「は」「へ」「を」や四つ仮名、長音を除…

カタカナ先習論

私のアルメニア語学習なんて「学習」とは言えないいいかげんなもので、一人で勝手にボソボソやっていただけ、ものの役に立つ段階に達することはるか遠いまま帰国してやめてしまったが(文法構造がわかればそれでいいなんて程度の動機だから、ハナからてんで…

文語は日本語の半分

アルメニアにも「古文」(グラバールという)がある。古典がそれで書かれているだけでなく、教会の典礼語として今も使われているのだが、ふつうの人はわからない。学校で習わないから。しかるべき教育を受けた人しか読めないのは中高ドイツ語もそうだが、し…

「日本統一標準身ぶり」

日本語を教えるとき、特に初級を教えるときには、意識的であれ無意識的であれ、誰でも身ぶりを活用しているはずである。相手とはことばによるコミュニケーションがほとんどとれないのだから、外国へ行った人が身ぶり手ぶりで意思疎通をはかるのと同様、自然…

「漢字習得辞典」凡例

凡 例 収録:学習漢字(1006字)+日本語能力試験2級漢字(出題基準旧版1000字・改訂版1023字) 計1176字 それ以外の常用漢字は一覧で掲げる(総計1945字)。 常用漢字表の順に載せる。 字義は字訓で表す。常用漢字音訓表にない字訓は…

「漢字習得辞典」緒言

緒 言 この辞書は、独習を余儀なくされたフェルガナ大学の学生たちのために作りはじめられたものであり、漢字圏や欧米先進国でない外国で日本語を学ぶ学生や成人学習者を使用者に想定している。 日本語が漢字を使いつづけるかぎり、そして学習者の側でテクス…

アンケートで見るロシア地方大学日本語コースの学生たち

たとえばルーマニアのような国をとってみれば、そんな遠い国のことなんか普通の日本人はほとんど知らない。それは仕方がない。けれどロシアは、隣国の大国だから、いろいろ知っているつもりでいる。しかしはたと考えてみると、ソ連時代は鎖国のようなものだ…

日本語のこれも最前線

日本語の最前線といえば、まず第一に、次々と新語(5年10年先の死語)を作り出しては消費していくマスコミ業界や若者世代であろう。だが、外国人日本語学習者も、日本語に新しい命を吹き込んでいる人々である。 彼らは基本的に、一生懸命正しい日本語を習…