2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ジプシーの昔話と伝説(13)

63.短いお話 昔一人の男がいて、男は牡牛に犂をつなぎ、牡牛に犂をつなぎおえると、それを畑に牽いて出て、それで畑を耕した。すると畑で箱を見つけたが、それには鉄の蓋がしてあった。畑で見つけた箱の鉄の蓋を開けると、そこから兎が畑に跳び出し、そい…

ジプシーの昔話と伝説(12)

61.ライネケ親方はどのようにして女房を手に入れたか*) 狐の親方は狐の仲間にひどく受けが悪かった。仲間たちは、親方が森や野原で、家や庭でやってのけたという驚くべき事柄のあれこれを語り合っていた。踊りの庭ではいつも最初にやってきて、いつも最…

ジプシーの昔話と伝説(11)

60.狼と狐*) 狼と狐が友だちになり、二匹はいっしょに獲物をさがしに出た。狐は狼より狡くて賢かったので、決して成し遂げたことのない勲しをやたら自慢している狼よりも、いつも大きな獲物を捕まえた。(狐の)ライネケ**)の抜け目なさと分別のおか…

ジプシーの昔話と伝説(10)

59.狐と狼が魚を捕りにいく あるとき狐と狼が友だちになり、いっしょに魚を捕りに出かけた。冬のあるとき川のほとりへ行き、物陰に横になった。狼は疲れてすぐに眠りこんでしまったが、狐は川の氷に穴を穿って魚を捕っている漁師に気づいた。狐はこっそり…

ジプシーの昔話と伝説(9)

58.年寄りと狼 ずっと山の上の小さな小屋に、一人の年取った男が孫の四人の小さな子供と暮らしていた。孫たちをとても可愛がり、よく世話をしてやっていた。村へ食べ物を買いにいくときには、孫たちにこう言いきかせた。「いいか、誰かが戸口に来たときは…

ジプシーの昔話と伝説(8)

57.蟹と蛭と蛙 蟹と蛭は長いこと小川の中でともに和やかに暮らしていた。いっしょに獲物をとりにいき、お互い喜びも苦しみも分け合っていた。あるとき蛙に、自分のところで楽しい一日を過ごそうじゃないかと招かれた。時間どおりに蛙の住まいに現われて、…

ジプシーの昔話と伝説(7)

56.学校へ行った蝿 昔一匹の蝿がいて、学校の先生の住まいに迷いこみ、子供たちが歌を習っているのを長いこと聞いていた。歌はこのように始まった。 「ズン、ズン、ズン、 驢馬はまったく馬鹿な奴!」 蝿もすぐにこれを覚え、ひそかにこう思った。「さあ…

ジプシーの昔話と伝説(6)

52.王様と鼠*) 何年も何年も前、ここから遠いところに、豪勢な王様がいたが、自分の民にひどく恐れられていた。というのも怒りっぽく残忍で、退屈して何か楽しみがほしいときにはよく、目の前で何人かの人間の体を鋸で挽かせ、哀れな連中が痛みにのたう…

ジプシーの昔話と伝説(5)

48.女の子と蛇 ある百姓に二人の娘があって、下の子は言うことをよく聞く働き者だったが、上の子は怠け者で言うことを聞かなかった。下の子は朝早くに起きて家事をみていた。母親はとっくに死んでいたから。上の子はやっと昼ごろ寝床から起き上がり、一日…

ジプシーの昔話と伝説(4)

45.あたしを心から愛してくれる人 あるとき四人の姉妹が家の庭に坐っていた。一番上の姉が尋ねた。「いったい誰があたしたちを心から愛しているか、知ってる? 死なんばかりのところから救い出すために、自分の命を投げ出すのは誰?」 二番目の姉はこう答…

ジプシーの昔話と伝説(3)

37.ジプシーと宝物 いつだったか貧乏なジプシーが大きな森に来て、眠ろうと木の下に寝転がった。すると夢の中にいきなり白い装束の女が現われて、こう言った。「お前は貧乏なジプシーだね、金持ちにしてあげよう。森の奥深く入っていきなさい、川のほとり…

ジプシーの昔話と伝説(2)

34.不実な寡婦 ずっと遠くの山の上の、ある木の穴に、一羽の烏が女房といっしょに住んでいた。烏は若い女房をとても愛していたが、女房のほうはほとんど気に留めていなかった*)。あるときふたりは鼠を食って、小さな骨で烏の亭主は喉がつまっちまった。…

ジプシーの昔話と伝説(1)

32.謎掛け男 昔四人の兄弟が住んでいたが、とても貧しかった。そこで一番上の兄が言った。「俺はもう貧乏はごめんだ! 俺は世間へ出ていく。金持ちになったら、もどってお前たちを引き取りにくる」。貧しい兄は夜も昼も歩いたが、食べ物もなければ、飲み…

ハインリヒ・フォン・ヴリスロツキ

ハインリヒ・フォン・ヴリスロツキは、十九世紀のジプシー研究者として知られた人である。ジプシー研究者はそれ以前からいるし、ジプシーと一緒に生活した人々も昔から数多くいるが、民俗学的な目的で放浪ジプシーの集団と行動を共にした、「フィールドワー…

詩二篇

トランシルヴァニア悲歌 アドルフ・メッシェンデルファー ここでは泉の音は異なり 時の流れは異なる 驚きやすい少年は永遠の畏怖を早く知る よき奥城の中 父祖の遺骸は朽ち ためらいがちに打つ時計 ためらいがちに毀れる石 門の紋章を見よ 疾うに色褪せたそ…

婚礼の道行き

あるいはチャウシェスクに感謝すべきなのかもしれないけれど、トランシルヴァニアのハンガリー人の村には、古い習俗がよく保たれている。ヒース地方のある村で、昔ながらの伝統を守った結婚式を見た。民族衣装の美しさもさることながら、式の運びの頑固な古…

ケーレシ・チョマ・シャーンドル

チベット学の開拓者ケーレシ・チョマ・シャーンドル(1784−1842)は、初めての蔵英辞典を作ったことで知られている。セーケイ地方のケーレシュ村に生まれ、ナジエニェド(アユド)の高等学校とゲッチンゲン大学で学んだ。ハンガリー人というのは、東…

竜について

あなたは竜を見たことがあるか。 実際に竜を見た人はどのくらいいるのだろう。私はない。ないけれど、竜がどんなものか、いくらかは知っている。日本や漢土の竜、また聖ジョージに退治されるような西洋の竜についてもいかほどかは。いくつも話を聞いたり読ん…