2008-01-01から1年間の記事一覧

CWC雑感

何と評したらいいか、ことばに困る。ガンバ大阪とマンチェスター・ユナイテッドの試合のことである。「惜敗」ではもちろんない。5点も取られれば完敗、惨敗だ。 しかし一方で、3点を取っている。サッカーのようなロースコアのスポーツで、3点取ればふつう…

ノアのいろいろ大洪水

鼠に悩まされていた町が退治してくれた者にほうびをやると触れ出した。しかし、ふらりとやってきた笛吹き男が笛の音で鼠を誘い出し、川でおぼれさせて駆除してやったのに、約束のほうびを出し惜しみ、怒った男が笛を吹くと今度は町の子どもたちが誘い出され…

ACL雑感

いつも話題に遅れ気味だけど、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)はよかったね。ガンバ大阪が優勝、それもホームもアウェイも快勝、完勝だったから、見ていて爽快だった。ウズベキスタンみたいなまだ飲み水を池から汲んでくる町のある国がアウェイでウォ…

アララトはあるかあらぬか雲の涯

アルメニアに来たら、アララト山を見なければ。何も努力のいることではなく、首都イェレヴァンに来て、顔を南に向ければ見える。晴れていればだけど、雨の少ない土地だから、何日かいればきっとよく晴れた日にめぐりあう。 その標高は、実はいろいろな本で少…

デジャ・ヴュ

アルメニアに来る人は、きっとドルマ(葡萄の葉で巻いた一口大のロールキャベツ)をすすめられる。土地の名物料理だというのだが、これはルーマニアで馴染みの料理で、あそこでも自分とこの名物だと言っていた。羊肉のつくねみたいなものもそう。アルメニア…

困った古書注文主

本が好きで、古本屋も好きだ。しかし上京しても神田へは行かない。時間も金もないのがその理由で、神保町に足を踏み入れると一日つぶれてしまうから。ほしい本が目について、買おうか買うまいか、心は千々に乱れる。えいやッと買ってしまって、金が足りなく…

日経そのほか

活字なしで日は暮らせないけども、しかし新聞雑誌は買わない。キオスクには悪いが、あんなもの読み捨てで、ゴミの生産だから。私以外の人から儲けて下さい。新聞も雑誌も、図書館で読むか、網棚に置き去られているのを読むか、待合室の備えおきを読むかであ…

その死

もはや旧聞だが、アフガニスタンで農業支援を行なっていた日本のNGOの青年が殺された。この事件をめぐって、いろいろ考えさせられることがある。 人は人を映す鏡である。彼が連れ去られると、700人もの村人が犯人を追いかけたとか、犯人を自分たちで石…

五輪雑感

最悪のオリンピックは、最新のオリンピックである。4年ごとの催しのため、前回のことは記憶に薄れているのだ。涙の谷間に生きる哀れな人間たちは、不快なことはさっさと忘れ、楽しいことはいつまでも記憶するように作られている。4年に1度とは、よくした…

暑い

暑い、暑い。暑くてたまったもんじゃない。 トシをとって体力が落ちたか、今年のこの暑さがひどいのか。おそらくその両者が幾分かあるのだろう。最高気温も平年より高いのかもしれないが、問題はたぶん最低気温のほうだ。いつもは、西日本の各地が熱帯夜でも…

カタカナ先習論

私のアルメニア語学習なんて「学習」とは言えないいいかげんなもので、一人で勝手にボソボソやっていただけ、ものの役に立つ段階に達することはるか遠いまま帰国してやめてしまったが(文法構造がわかればそれでいいなんて程度の動機だから、ハナからてんで…

ドバイ

われわれの赴任では、往路の切符は支給されるが、帰路はされない。アルメニアと日本を結ぶ路線は、ふつうモスクワ経由だ。元はソ連の国内便だから、毎日何本も飛んでいる。しかし、シェレメチェヴォと成田はきらいな空港ナンバー1とナンバー2である。しか…

ローマ字アルメ字優劣論

Ամպել ա, ձուն չի գալի, Շողե՜ր ջան. Սարիցը տուն չի գալի, Շողե՜ր ջան:アルメニアではキリル文字でもラテン文字でもない独特なアルメニア文字を使っていて、この文字をデザインした絨緞や壁掛けのようなみやげ物をよく売っている。おもしろがって買い求める…

話されなかったスピーチ/迷信を信じますか

<迷信を信じますか/ヴァルダニャン・アレヴィック> 今は人々がもっとげんじつてきになっていますから、迷信を信じる人はへってきましたが、昔から世界中の民族にいろいろなぞくしんや迷信がありました。キリスト教は迷信をみとめません。でもキリスト教徒…

話されなかったスピーチ/すき、きらい、すき…

<すき、きらい、すき…/イェゴヤン・ナリネ> 民族や時代をこえて、愛こそかみさまがくださったいちばん大切なものだと言われています。愛は人を優しくし、人生にいみをあたえてくれます。愛にはいろいろな愛がありますが、今はそんなに広く紹介できないの…

話されなかったスピーチ/日本で考えたこと

<日本で考えたこと/ホシモワ・ユルドゥズ>子どものころ、ある友だちから日本語を教えている「ノリコ学級」という学校があると聞きました。おもしろそうだと思って、「ノリコ学級」へ行ってみました。学校の門からあるやさしい顔をした日本人のおじいさん…

話されなかったスピーチ/私たちとアル・フェルガーニー

弁論大会の予選で終わるスピーチが好きだというのは、前に書いたことがある。本大会に出てきたり、そこで入賞したりするようなスピーチは、審査員受けのいい「よい子の意見」であることが多いもの。もちろん指導する以上好成績は望むが、それとはまったく別…

文語は日本語の半分

アルメニアにも「古文」(グラバールという)がある。古典がそれで書かれているだけでなく、教会の典礼語として今も使われているのだが、ふつうの人はわからない。学校で習わないから。しかるべき教育を受けた人しか読めないのは中高ドイツ語もそうだが、し…

アルメニア民謡ふたつ

「いとしいショレル」くもりでも ふりはせぬ ショレル・ジャン 山路から もどらない ショレル・ジャン ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン 小雪がまいだした ショレル・ジャン わが胸は 火ともえる ショレル・ジャン 眠れない いく夜すぎ ショレル・ジャン …

大会の祝辞をそれでも言おう

40人ばかり入るサイズの教室で、7人ほどの学習者がスピーチした。日本人が3人来た。それだけ。これっぽっちの催しを背景に、これから聞きようによってはかなり大仰なことも言いますが、この眺めを頭の片隅に置いて、適当に修正を加えつつ聞いて下さい。 …

春が来た

この3月1日は春の最初の日として記憶されるはずだったのだが。 2時から4時ぐらいの間外出した。よく晴れて暖かく、気持ちのいい日だった。雪は消え、数日前から帽子をかぶるのもやめて、この日からはマフラーもとった。もう最低気温もプラスである。冬の…

「ボス」考

いろいろなところで教えたり、日本語教育機関調査に携わったりして、旧ソ連の地方都市の日本語教育をめぐる環境については心得がある。地方都市のかかえる問題にはだいたいいくつかのパターンがあることがわかった。 そのうちのひとつは、「地方のボス」の存…

蒐書家悲史

アルメニアではそんなに本を買ったわけではないが、それでも買うことは買う。しかもできるだけ安く買う(本に限らず、けっこうこの国物価が高いんです)。 本は好きだが、その業界についてくわしいわけではなく、本の再販制というのが日本の特殊な制度なのか…

アルメニア、ダイヤモンド工場―2007 <中沢 博美>

[石消子敬白] 今「イェレヴァン日本語クロニクル」というものを作っていて、それにこんな原稿をもらいました。しかしさすがにこのままでは載せられず、文中のいちばんおもしろい部分(それは往々にして「いちばん差しさわりがある部分」と同義です)を割愛…

寒行としての図書館

着任してから前期が終わるまでの学期中は、何かと気が休まらなくて、ひまな時間があってもなかなか自分の好きなことはできない。授業が終わり、試験期間とそれに続く冬休みになってようやく、じっくり本でも読もうかということになるのだが、ここでは別の難…

山の南

「レモン」の木は花さきくらき林の中に こがね色したる柑子は枝もたわゝにみのり 青く晴れし空よりしづやかに風吹き 「ミルテ」の木はしづかに「ラウレル」の木は高く くもにそびえて立てる国をしるやかなたへ 君とともにゆかまし 「ミニヨン」、アルプスの…

冬の散歩

冬は外を歩きまわるのにいい季節ではないけれど、学期が終わるのがこの時期だからしかたがない。今まで出歩けなかった分をとりかえそうと、晴れた日を選んで郊外をせっせと歩いた。行った先は廃墟ばかり。廃墟なら冬もいいかもしれない。 まず、エレブニ遺跡…

大虐殺から考える

旧聞だが、この秋に日本からある研究者がアルメニアを訪れたとき、頼まれてその調査の手配をした。それは1915年のトルコによるアルメニア人大虐殺に関して、虐殺記念碑・記念館が平和施設となっているのだろうかというテーマのものだった。 ナチスのユダ…