2007-01-01から1年間の記事一覧

世界最強の通貨?

アルメニア人はモスクワで宿に困らない。親戚の誰か、ことによると家族の誰かがモスクワで働いているからだ。親戚や友人のネットワークが強力な民族にあっては、もちろんそこにこころよく泊めてもらえる。 アルメニア人はディアスポラの民で、世界各国に散ら…

晩秋の日々

このあいだの週末はおもしろかった。 招待券をもらって、土曜日の夕方、エレヴァンに来て初めてオペラ劇場に行ったのだけど、そこで私が見たものとは? 柔道のトーナメント。何でまたオペラ座で?というあなたの疑問はもっともだ。私も何度も確認した。日本…

水槽のあるわが住まい

アルメニアに着いて、空港から連れて行かれたのは前任者の住んでいたアパートだった。地下鉄の終点から歩いて10分ほどというのは、エレヴァン基準で便利なのか不便なのかよくわからない。もっと不便なところもあるだろうし。だが、部屋が北向きで、陽がま…

入賞始末

先日、エレヴァン人文大学の学生がモスクワのCIS弁論大会で6位入賞したのを祝って、日本センターの教師がパーティを開いてくれ、エレヴァンの日本語教育関係者や在住日本人のほとんどが集まった。よその機関の学生なのに、ありがたいことである。 日本セ…

自由で独立した弁論へのアルメニアの遠い道のり

先日モスクワで行なわれたCCIS日本語弁論大会で、エレヴァン人文大学の学生が6位に入賞した。アルメニアから初の入賞である。自分が指導した学生がいい成績を得て、喜ばない教師はいない。だが、その喜びとは別のところで。 日本語教育において、旧ソ連…

「日本統一標準身ぶり」

日本語を教えるとき、特に初級を教えるときには、意識的であれ無意識的であれ、誰でも身ぶりを活用しているはずである。相手とはことばによるコミュニケーションがほとんどとれないのだから、外国へ行った人が身ぶり手ぶりで意思疎通をはかるのと同様、自然…

アジアの虚妄、アジアの愉楽

いささか旧聞だが、7月のアジアカップはおもしろかった。いろいろ考えさせられた。おもしろくなかったと言う人は、きっと日本の4位という結果に不満なのだろうが、日本戦しか中継しない民放の同類になってしまってはつまらない。ナショナリズムはサッカー…

芸名・偽名・変名

最近ある研究会で発表をし、主催者に原稿を会誌に載せたいと言われて、では平賀英一郎の名でと言ったら、怪訝な顔をされた。もちろん、いぶかしむほうがもっともである。 人はなぜ本来の名前でないものを用いたがるのだろうかという根本的な問題はとりあえず…

石見銀山の世界遺産登録

石見銀山が世界遺産になった。あれにそんなものになる価値があるのかと問う人がいたら、自信をもって「ある」と答えよう。なぜなら、地元の人はみんな、「これ、世界遺産?」と思っているからだ。なったのでみんな喜んで、住民が450人しかいない町で提灯…

入蔵熱の周辺

19世紀の後半、「イギリス人国境官吏のあいだでは、目と鼻の先にあるこの謎めいた禁断の国に行きたくなるのが、一種の「職業病」にさえなっていた」(*1)。当時厳しく鎖国していたチベットは、鎖され謎めいていればいるだけ、先進諸国の冒険心に駆られた人…

チベットのパパラッチ

人間は秘密が大好きだ。子供を見るがいい。秘密基地をせっせとこしらえて、暗号で指令を送ろうとする。人間とは結局、子供なのである。秘密が好きなのときっかり等量に、秘密を破るのも大好きだ。自分の秘密は守らねばならず、人の秘密は暴かねばならない。…

チョマが国境を越えたとき

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、古のシルクロード、東西トルキスタン・アフガニスタンとチベットを含む中央アジアは、英露間の勢力拡張の争い、いわゆる「グレートゲーム」の舞台であり、特務将校が潜行をはかり、往々落命する地域、また、特にその…

能海寛の非命と栄光

ちょうど19世紀から20世紀にかわるころ、当時鎖国のチベットに入り込もうとしていた4人の日本人がいた。河口慧海・成田安輝・寺本婉雅と、石見国は波佐村出身の能海寛(のうみ ゆたか、1868-1901?)である。俗人(クリスチャンであった)の成田以外はみ…

回転寿司における日露協調

ついこのあいだまで経済危機にあえいでいたはずなのに、ロシアは今やスシバーの立ち並ぶ国である。そのロシアの回転寿司人気メニューというのをテレビでやっていた。見れば箸もけっこう上手に使っている。ベストテンはというと、 1.スパイシーサーモン 2…

イェニーの恋(3)

6. 誕生日の当日に届いたすばらしい贈物、それから受けた大きな喜びに対し、さらに一筆することをお許し下さい。私がどんなに驚き、また感動したか、信じていただけないでしょうが、この本のすべてが並外れて美しく意味深いものでした。ご自分では自覚され…

イェニーの恋(2)

4. ようやく貴嬢に、われわれの昔話集へのご助力に対してお礼を申し上げられることとなりました。ご手稿は、大きな喜びとともに、まさに時を得て到着しました。自分の手で本が送れる時まで謝辞を控えていましたが、今やっとそれを果たすことができます。第…

イェニーの恋(1)

ヴィルヘルム・グリム/イェニー・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ往復書簡 1. 1813年7月25日のあたたかい思い出のために。 旅人ひとり野道を行く 地の上はいかにも暑く 日は頭に焼きつくよう 深い茂みの森へと急ぐ。 そこではいつも涼しげに 風があ…

「漢字習得辞典」凡例

凡 例 収録:学習漢字(1006字)+日本語能力試験2級漢字(出題基準旧版1000字・改訂版1023字) 計1176字 それ以外の常用漢字は一覧で掲げる(総計1945字)。 常用漢字表の順に載せる。 字義は字訓で表す。常用漢字音訓表にない字訓は…

「漢字習得辞典」緒言

緒 言 この辞書は、独習を余儀なくされたフェルガナ大学の学生たちのために作りはじめられたものであり、漢字圏や欧米先進国でない外国で日本語を学ぶ学生や成人学習者を使用者に想定している。 日本語が漢字を使いつづけるかぎり、そして学習者の側でテクス…

日本国有鉄道を論じてITに及ぶ

台湾へ行ったとき、九份(ここへ来る観光客の半分は日本人で、そのまた半分は関西人だと思う)から台北へ「JRで行くか、バスで行くか」話し合っている日本人客の会話を聞いた。その人は「国鉄=JR」の変換式が深く身についているのだろう。この場合、「…