2023-01-01から1年間の記事一覧

広い世界の片隅に

日本とのつながりの薄いウズベキスタン、国名を言ってもどのくらいの日本人がその存在を知っているか怪しい国の中でも、首都から450キロ、2200メートルの峠越えをしなければたどりつけない地方都市で、20年前に日本語を教えていた。 フェルガナ国立大学の、…

漢字を検索する

与えられた課題は「外国語教育における革新的アプローチ」だが、私の話は革新というより退嬰かもしれない。このIT時代、もはや紙の辞書の需要は薄れているであろうこの時代に、紙の辞書を作ろうというのだから。 日本語は世界でもっともむずかしい書記体系を…

龍の文明圏

龍/ドラゴンは想像上の動物であって、巨大爬虫類、だいたいは大きな蛇で、脚があり、翼はあることもないこともあるが、空を駆けるというところが特徴である。水との関りが深い。キメラ(ライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾から成る)のごとき合成怪物で、中…

見たい、見たい、もどかしい

このところの日本代表は男女ともすごい試合をしているようで、うれしくはあるのだけれど、外国にいるため見られないのがもどかしくてしかたがない。 女子W杯の日本戦は試合翌日にFIFAの配信で見ただけ。見られないよりは数倍いいけれど、結果がわかったあと…

上から下、左から右!

着任したときはもうコースが始まって3か月近くたっていたのに、まだひらがな・カタカナが怪しい。それからひと月たってもさまで改善しないので、業を煮やして、ひらがな・カタカナテストをすると宣言した。「半分できないようならサヨナラだよ!」と脅したが…

石見神譚

神話を考えるときには、かなりの注意が必要だ。伝承がおそろしく錯綜しているからである。見取り図を書けば、以下のようになろう。 まず、「正史正伝」というものがある。中央政府が認めたもので、要するに記紀(『古事記』『日本書紀』)である。これはテキ…

なつかしい村

一 上村に「松尾のおじさん」という人がいて、ときどきうちを訪ねて来ていた。親戚だとは聞いていたが、どういう続柄か知らなかった。最近ようやく祖母のいとこ(祖母の父の甥)だと知った。名前が久朗であることも。 記憶の中の顔立ちはもはやはっきりしな…

春暁という画家

拡張現実ならぬ拡張記憶というものがある。父母、祖父母など、上の世代から聞いた話によってもたらされた記憶である。自分で見たり聞いたりしたわけではないので、不正確でもあれば脚色誇張もまじってはいるだろうが、オーラル・ヒストリーはそれによって作…

WBC雑感

日本が世界大会で優勝してうれしくなくはないのだけども。 ちょっとこれ、おかしくないか。球場は満員、中継の視聴率はすべて40%超え、準決勝イタリア戦では48%だったそうだ。だが、その相手は? 予選リーグで対戦したのは、中国・韓国・チェコ・オースト…

日本語文法ひとり合点

「造化の妙」ということばがある。自然界のもろもろを眺めていると、それがあまりに精巧で調和あるさまにできていることに感動せずにはおれないだろう。自然界だけでなくそれは人界にもあり、文法などがまさにそれだ。体系的で規則的で整然としていて、美し…

「留学のいろいろ」刊行

最近留学についての本を出したが、これは、好きな人たちの事績を眺め渡すと、近代史の必然であろうか、その多くに留学体験があったので、それを並べてみたらこうなった、というような自然発生的な成り立ちをしている。 島根県出身者が中心となったのも必然で…

「勝達漢詩集」

(昨年暮れに出した漢詩集の後記) 著者が自選できればよかったのだが、それができかねるため、代わって漢俳を含む125首を選んだ。短歌や俳句なら多少はよしあしもわかるけれど、漢詩の巧拙はてんでわからないので、題材で選んだ。京都や箱根のような誰もが…