2013-01-01から1年間の記事一覧

「単一民族国家」

アルメニアで暮らしてひとつの驚きだったのは、アルメニア人にしか会わなかったことだ。少数民族に興味と好意を(なぜか)もっているので、どの国に行ってもそこの少数民族の知人ができる。気がつくとまわりは少数民族だらけだったりする。犬好きは犬が知る…

弁論大会の両極

いろいろな国で日本語弁論大会に関わってきて、知識も経験もそれなりにあるつもりでいたが、なにごとにせよ奥は深い。今年になって弁論大会の両極端を4か月のスパンで体験した。 トルコにいたときの教え子で当時留学中だった学生が参加したので、「第54回外…

探偵小説ベスト10

・ミルン「赤い館の秘密」 探偵小説とはどんなものか知りたければ、これを思い浮かべればいい。典型的であり、完成形であると言っていい。つまり、探偵小説という形式は1921年にもう完成されていて、そのあとは惰性というわけだ。 穏やかなユーモアが好もし…

映画ベスト10

フィクションから降りて久しい。 小説はもとから好きでない。昔は演劇青年だったが、演劇ももはや見ない。昔せっせとよく見た映画も、今は忌避の対象だ。アメリカ映画はとうに軽蔑の対象となりはて、ヨーロッパ映画も早くに見るのをやめた。東欧・ロシア映画…

牛と山川草木と

先日知人が訪ねて来てくれたが、到着時間は7時半を過ぎる。温泉の共同浴場は9時(!)に閉まるので、夕食は駅弁を買って食べてくるように言った。 だが、山陰線は下関から出雲市まで駅弁なんか売ってないし、車内販売もない。ここらを走る特急は2両編成なので…

コンフェデ杯雑感

今回のコンフェデレーションカップでは、前半途中で睡魔に負けてしまった3位決定戦以外は全部見ることができた。準決勝の2試合など、見ごたえのある試合がいくつもあったけれど、いちばんおもしろかったのはタヒチかもしれない。 タヒチと日本以外は強豪だっ…

北朝鮮とボランティア

私は北朝鮮のミサイル実験を断固として支持するものである。まわりの国すべてがミサイルを持っているのに、北朝鮮のみがミサイルを持ってはならず、開発をしてはならないというのはわけがわからない。自分はピストルを突きつけておいて、お前はピストルを持…

頓知話「テナリ・ラマンと泥棒たち」

むかしむかし、ヴィジャヤナガラ王国に、テナリ・ラマンという有名な知恵者がおりまして、シュリークリシュナ・デーヴァ・ラーヤ王に仕えておりました。 あるとき、知り合いの茶店の亭主がため息をつきながらこう言いました。 「テナリさん、どうもいけない…

インドで初体験

暑いのが苦手で、日本にいるときは7月半ばから9月半ばまではほとんど何もできない。だから熱帯で働くなど思いもよらぬこと。外国暮らしもずいぶん長いが、雪の降らないところには住んだことはないし、雪どころか、幅1キロもありそうな川が全面凍結するような…

越境、越境、また越境

「本物」などない。あるのは「本物」の影だけだ。 外国人に「本物」を見せる、などというが、本当か。東京で歌舞伎座に連れて行けばたしかに「本物」の歌舞伎が見られるが、外国に住む外国人にはどうするのか。引越し公演というやり方もある。しかしそんなこ…

インド備忘帳

・あるとき学生たちの写真を見て、彼らはこんなに黒かったかと驚いた。もちろん黒い。黒人の黒さとは違うが、そして黒さにも人により違いがあって、アフリカ人とまがう黒さから南欧人の浅黒さ程度までグラデーションはあるが、われわれよりはもちろんずっと…

インド四変化

「日本人であることの幸せ」は無数にある、かどうか知らないが、そのうちのひとつは「本が読める」ことだ。本なんかどこでも読めるだろうと思われるかもしれないけれど、どうして、そう簡単にはいかない。書物そのものが少ない国は非常に多いし、その流通が…