アルツハイマー?

 物忘れは昔からの古なじみだが、最近は頻度も程度も上がっていると感じる。人の名前が出てこないのが特にひどくなった。

 夢の中でも名前が出てこない。どういう夢だったか忘れたが、森鴎外の系譜に連なる人について考えていて、柳田国男斎藤茂吉石川淳澁澤龍彦などは挙げられるのに、ある有名な作家の名がとんと思い出せない。「おかめ笹」を書いた人、「つゆのあとさき」「腕くらべ」を書いた人、断腸亭主人、とまで出るのに、名前だけが出ない。起きてからもしばらく思い出せず、やっと永井荷風だとねじり出せた。手がかりとして、未読の花柳小説「腕くらべ」や「おかめ笹」などが出て、愛読の「墨東奇譚」「日和下駄」や「下谷叢話」などが出てこないのも妙だ。別の医学者詩人もなかなか思い出せなくて、太田と本名のほうが先に出た。木下杢太郎とさいわい睡眠中に思い出せたが。

 こういうのはどういうメカニズムによるのだろうか。何か説明はつくのだろうが、つこうがつくまいが困ったことである。若年性アルツハイマーかと思ったけども、よく考えるともう若年ではない。いくらか早いかもしれないが、早すぎるほどでもない。注意しなければと思うけれど、何に注意したらいいのだろう? 行きつくべきところに向かって、下り坂をゆっくり下りつつあるということか。