アルメニア民謡ふたつ

「いとしいショレル」

くもりでも ふりはせぬ ショレル・ジャン
山路から もどらない ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン


わが胸は 火ともえる ショレル・ジャン
眠れない いく夜すぎ ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン


雪じゃない 火がふるよ ショレル・ジャン
もえさかる 恋心 ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン


夏まつり そのときに ショレル・ジャン
山の雪 くださいな ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン


峰峰を 白くそめ ショレル・ジャン
金の髪 なびかせて ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン


城の下 あのあたり ショレル・ジャン
見えるだろ あの家が ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン


秋がきた み山から ショレル・ジャン
葉がおちた 木のこずえ ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン

つれなくも 去ってゆく ショレル・ジャン
あの子から 恋人が ショレル・ジャン
  ゆれるよ ゆらぐよ ショレル・ジャン
  小雪がまいだした ショレル・ジャン



「月のめぐみ」

すずしき 月夜に ヴァイ レ レ レ レ ジャン レ レ
眠りの あまさよ ヴァイ レ レ レ レ ジャン レ レ
  眠りの あまさよ ヴァイ レ レ レ レ ジャン レ レ


ねぐらの 鳥たち ヴァイ レ レ レ レ ジャン レ レ
うたうは うぐいす ヴァイ レ レ レ レ ジャン レ レ
  うたうは うぐいす ヴァイ レ レ レ レ ジャン レ レ



滞在した土地の民謡を訳すのが趣味である。しかしロシアでは訳さなかった。ロシア語は専門家が大勢いるし、歌の翻訳も数多い。訳すのはもっぱら弱小言語から。
民謡だからその土地では誰でも知っている歌なのだけど、日本でこれらのメロディを知っている人は指折って数えられそうなほど少ない。1億というのは恐ろしい数字である。母数がこれだと、100万人でようやく1パーセント。100人だったら0.0001パーセント。あ、ごめんなさい、大きなことを言ってしまいました。アルメニアタタールだとさらに「桁違い」で、0.00001ぐらいにもなってしまう。これはもはや「誤差」ですらない。これほどひどい数字ではなく、「誤差の範囲」かもしれないけども、相手国のほうでも日本語ができる人なんてコンマ以下の少数だ。
よろこんで歌ってくれる人の楽しげな歌声を聞いてけっこう満足しているが、こんなふうに考えるとはかないものです。まあ、趣味なんてそんなものかもしれない。