ジプシーの昔話と伝説(5)

                48.女の子と蛇


 ある百姓に二人の娘があって、下の子は言うことをよく聞く働き者だったが、上の子は怠け者で言うことを聞かなかった。下の子は朝早くに起きて家事をみていた。母親はとっくに死んでいたから。上の子はやっと昼ごろ寝床から起き上がり、一日をゴロゴロ旦那とグウタラ奥様のとこで過ごしていた。朝早く働き者の娘は、牛の乳搾りに牛小屋へ行った。小屋には小さな蛇が住んでいて、毎日隠れ処から這い出てきては、娘に鉢いっぱいの乳をもらっていた。そのために牛たちは、お隣より三倍も多くの乳を出していた。百姓はたくさんの乳を見て、いつも不思議に思っていた。
 あるとき百姓は娘に言った。「明日は姉さんが乳を搾るんだ。あいつもこんなにたくさん乳を持ってくるか、見てみよう!」 さて次の日、百姓の上の娘が牛小屋へ行った。蛇に気づくと、叫び声をあげた。「何してるのよ?」「乳がほしいんだ」と蛇は答えた。すると怠け者の娘は言った。「待ってなさい、すぐあげるから!」 娘は石をつかんで、蛇を叩き殺した。さて雌牛を搾ろうとすると乳を出さず、娘は空の壷をさげて部屋にもどった。
 そこで下の娘は牛小屋へ行き、蛇が殺されているのを見つけると、おいおい泣いた。娘は死んだ蛇を取り上げて庭に埋めた。次の日の朝目を覚ますと、庭へ行き、蛇を埋めた場所に金の林檎をつけた木があるのを見た。娘は木から林檎をもいで、とても金持ちになり、まもなく伯爵の息子と結婚したが、怠け者の姉はゴロゴロ旦那に好かれるぐらいで我慢してなければならなかったとさ。