56.学校へ行った蝿
昔一匹の蝿がいて、学校の先生の住まいに迷いこみ、子供たちが歌を習っているのを長いこと聞いていた。歌はこのように始まった。
「ズン、ズン、ズン、
驢馬はまったく馬鹿な奴!」
蝿もすぐにこれを覚え、ひそかにこう思った。「さあて、俺はたっぷり勉強して、親戚のみんなよりよくできるぞ。さあ、世の中へ出て、けものどもに教えてやろう」。蝿は草地に飛び出ていったが、そこには年取った驢馬が草を食んでいた。はたと思った、こいつは願ってもない! 驢馬の背中にとまって、歌いだした。
「ズン、ズン、ズン、
驢馬はまったく馬鹿な奴!」
「何を歌ってるんだい?」と驢馬は聞いた。
「ズン、ズン、ズン、
驢馬はまったく馬鹿な奴!」
と蝿は答えた。「こいつはまったくすてきだな!」と驢馬は言った。「俺も覚えることにしよう。お前はこんないい歌を教えてくれたから、俺もお前に飛び方を教えてやろう、今よりもっと速く飛べるようにな。尻尾の先にとまってみな!」 蝿は喜んで驢馬の尻尾の先にとまり、驢馬はすばやく蝿を空高く、あやうく首が折れそうになるほど振りとばして、地面に降りてもほとんど飛んでいくことができないほどだった。「恩知らずな奴だ!」と蝿はぶつくさ言って、さらに飛んでいった。川のほとりに着いて、岸辺の草の上にとまった。まもなく魚が泳ぎ寄ってくるのが目にとまり、歌いだした。
「ズン、ズン、ズン、
魚はムスムス黙りんぼ!」
すると魚は蝿目がけて、溺れそうになるほど水をたっぷり吹きかけて、蝿はどうにかこうにか飛んでいった。夕方ごろ家鴨に出会い、歌いだした。
「ズン、ズン、ズン、
家鴨はヨタヨタよろけもの!」
すると家鴨は言った。「こいつはまったくすてきだな! ただよく聞こえなかったんだ、ちょっと耳が遠いんでね! そばにおいで! ここのあたしの前に降りて、歌をうたってみせておくれな、あたしも覚えられるようにね!」 蝿は飛びよってきて、家鴨の前に降りて歌いだした。
「ズン、ズン、ズン、
家鴨はヨタヨタよろけもの!」
するといきなり、パクリ! 家鴨は学問をした蝿を呑みこんじまったとさ。