ジプシーの昔話と伝説(10)

             59.狐と狼が魚を捕りにいく


 あるとき狐と狼が友だちになり、いっしょに魚を捕りに出かけた。冬のあるとき川のほとりへ行き、物陰に横になった。狼は疲れてすぐに眠りこんでしまったが、狐は川の氷に穴を穿って魚を捕っている漁師に気づいた。狐はこっそり忍びよって、漁師の魚をいくつか失敬し、隠れていた場所で平らげた。ちょうど食事を終えたとき、狼が目を覚まして、魚の骨が地面に転がっているのを見た。「そうか、お前は魚を食ったんだな」と狼は言った。「それで俺には何にも残しておかなかったんだ」。「ああ」と狐は答えた。「けど、好きなほど魚の捕れるところへ連れていってやるよ」。そうして狼を穴のところへ連れていき、こう言った。「尻尾を水に突っこんで、魚が食いつくまで待ってるんだ、それから魚を放り投げろよ」。狐はこうしておいてから笑いながら去っていき、狼の方は尻尾を水に突っこんで、魚が食いつくのを待ち、穴がふたたび凍りつくまで、長いこと待ちに待っていたが、尻尾も水の中に凍りつめられたので、その場所から動けなくなってしまった。そこへ漁師が通りかかり、狼をしたたかぶん殴って、狼は自分の尻尾を引きちぎり、ようやくお陀仏をまぬがれて、尻尾を氷の中に残したまま逃げていったとさ。