備忘録/信号は赤だ

私はどうしてもニューヨークのあの同時多発テロを非難することができない。人間が自分の足で上ることができる以上の高さは不正であるとどこかで感じている。あんなのは全部ゴジラがなぎたおせばいいと、酔ったらきっと言い出す。天をも恐れぬバベルの塔の建設が神に阻まれたのは至当である。現代世界にいかに多くのバベルの諸塔が林立しているからといって、それを建てる行為の傲岸の度が減るわけではない。神の眼から見た人類の定義はたぶん、してはならないことをする連中ということだろう。「赤信号みんなで渡ればこわくない」。みんながどしどし渡っているとしても、信号が青なわけではないのに。跡地にもっと高いの建てるんだってね。目を覚ませ、と言いたいが、世の多数派に従えば、目を覚まさねばならないのは私のほうなんでしょう。
飛行機事故で死んだ人に対しても同情がない。飛行機なんかに乗るからだと思ってる。自分もよく飛行機に乗るが、乗ったらいつも、きょうで終わりか、などと考える。まだ死にたくはないが、そうならそうでしかたがない、等々。乗るたびに少しずつ死んでいる。飛行機の中では悪くすると血栓ができるくらい時間があるのだから、いろいろつまらないことを考えます。