中国覚え帳/ブログやってます

だいたいが首都がきらい、いなかが好き、という人間なもので、好んで地方の大学に赴任する。そして、赴任先の大学で雑誌を作る、というのが行動パターンだった。最近はそれがメールマガジンになり、ブログになった。紙も印刷代もいらず、より多くの人に見てもらえるのだから、当然の発展である。
地方の大学は、名を知られていない。知られていなくとも、学生は熱心に日本語を勉強している。彼らのために何かしてやりたいと考えるのは自然である。授業をするという本来業務のほかに、何か。そのとき、まず大学の存在を知ってもらうことが必要である。あなたたちは知らないかもしれないが、この大学でこんなに熱心に日本語を学んでいる学生がいますよ、ということを。
それから、学生個人を紹介するのにも役に立つ。このブログに私の文章も載っています、と示せれば、いい自己紹介になる。中国の企業に対してはどの程度効果があるかわからないが、日本人や日本企業なら一定のアピールにはなるだろう。だから、必ず実名で、フルネームで載せる(中国人は日本人並みかそれ以上にハンドルネームが好きだ)。元の作文にある誤りは丁寧に訂正してやる(時制・助詞の誤りなどが多いが、とりわけ自動詞・他動詞の区別は彼らにとって永遠の課題でありつづけるだろう)。
学生をそそのかし、作文コンクールにもせっせと応募をさせるのだが、さすが13億、全国規模だと四千点だの二千点だのといった数の応募がある。「ちょっといい作文」ぐらいではとても入賞できない。そんな入賞できなかった「ちょっといい作文」を発表する場にもなる。
いいことばかりだ。やらない理由なんかないのだ。大した手間でもないし。


そうしてせっせとブログ(アメブロ利用)をやるのはいいのだが、ときどきコメントがつく。反応があれば喜ぶべきところなのだけども、しかしこれが明らかに記事を読んで書いていないものなのだ。ほとんどは自分もブログをやっているのでよかったら来訪してほしいという類だが、それにしたって一応こっちのブログを読んでからつけてほしいと思う。機械的に送りつけているのだろう。抽象的一般的に「書き方がおもしろい」だの「参考になる」だの言っている。そんなわけないだろ! 中国人がつたない日本語で書いているんだぞ。個人でなく、すべて業者がやっているのかもしれない。
中には、
「××と申します、面白い記事お書きになってますね(*^_^*)私は、主にモデルのプロデュースなどの事業を行っております。もっと交流できたら嬉しいです、今後共よろしくお願い申し上げます。ちなみに芸能関係の仕事とかに興味ありますか?^^」
なんてのもあった。なぜ寄せられたのか意図のわからないコメントより、こんなに堂々と宣伝してくれたほうが誤解の余地がなくていいが、この手当たり次第感、どうなの、と思う。うちの学生たちの顔見たの? まあ四川省は美人どころで有名だけどさ。
さらには、
「おはつです![柱]`ロ゚)・;’ウゲェ!!普段全然お気に入りなんてしないけど、実際suseniさんのブログはお気に入り第一号なんですシ━━(^(^(^(^(^(^ω^;lll)━━ンで、見てるだけじゃいけないなぁって思って、勇気を振り絞ってカキコミしたんですけど…迷惑じゃなかったですか?(-∀-`; )できたら色々suseniさんを知りたい気持ちがいっぱいなんですけど、名前に載せたんですけど…迷惑だったら削除しちゃってくださいね。コメント欄じゃ聞けないこと聞きたくて・・・恥ずかしいけど色々教えて欲しいんです。相談したいこともあるし、suseniさんになら相談できると思ったんですヽ(*’∀’*)/」
と来たもんだ。これなんかも明らかにぼったくりサイト、エロサイトへの誘導だとわかるから、やっぱり実害はないんだけど、なくてよかったよかった、って話でもないしね。
ブログやツイッターやインターネット掲示板など、IT時代にそれまでに存在しなかったコミュニケーションの場が提供されるようになったのと軌を一にして、新しいコミュニケーションの作法(しばしば不作法)や語彙・構文(絵文字を筆頭に)が現れてきた。それら「ネット日本語」のほとんどは符丁の類だが、中には「空港なう」のような新しい文法現象も見受けられる。その方向には、人間行動学や言語学等にとっての、広く人間研究にとっての沃野が開けている。私などはもうそれに関わるには年を取りすぎているが、開拓すべき分野であることはまちがいない。
ま、あんなコメントなんかは、たぶんアメブロならではなんでしょうね。「はてな」はすばらしいと思う昨今である。