サハリン消息/腰の軽い人たち

先日、ロシア極東・東シベリア日本語弁論大会がここユジノサハリンスクで開かれました。ウラジオストクハバロフスクユジノサハリンスク総領事館のある3都市持ち回りで行なわれている大会で、今年はサハリンの番だったのです。
この地域に日本から公的に派遣されている日本語教師は12人。その全員が集まったのですが、その中に島根県出雲市出身の人がいました。その上、本人は大阪生まれながら、父親が江津、母親がなんと温泉津の出身だという人までいました。うちは造船所の前を通って、ガードをくぐり、なんて、サハリンでする話ではないね。12人中2.5人。何という比率だ。
これ、決して偶然で片付けられないんです。ウズベキスタンでもすごかったんだから。シニアボランティアに出雲市の人がまず1人。日本語専門家の奥さんも出雲市出身だが、父親はうちの隣町の出で、それから協力隊員に大田市出身が1人、調整員の奥さんもやはり大田市。温泉津を含むこの3市町はじき合併するんです(それとももうしたんだっけ?)。でも合併したって5万人に届かない程度。なのに、どうしてウズベキスタンなどという普通の日本人は名前もろくに知らない国のJICA関係者の中にこれだけいるの? 人口統計を無視してますなあ。島根県って、総人口の1%もないんだよ。
 島根県を離れて興味深いのが、外国で会う日本人には西日本の人が多いということ。東京を除くと、比率を抜きにした単純な数値比較でも、西日本人のほうが圧倒的に多いと思います(北海道人の数が異常に多いサハリンは例外ですが)。
 それはなぜか。まあ一言で言うなら、西の人間のほうが腰が軽いんでしょう。ハワイの標準語は広島弁だと聞いたことがあります。和歌山にあるアメリカ村、からゆきさんの出身地は天草でしたっけ? 早くから開けた地域は、土地で養える人口を越えた過剰人口を出すので、その人たちは移住するなり移民するなり、糊口の道を見つけなければなりません。ドイツ人の東方植民も、西ドイツ地域の人々が東方へ移住する運動でした。サハリンやシベリア・極東地域にウクライナ系の人が多いのも、それと同じです。旧満州の中国人は山東省出身が多いそうですね。人口過剰な食い詰め地という点で、西日本も同じなのでしょう。腰は必然的に軽くならざるを得ません。
島根県に戻れば、奇しくも10月1日のNHK・BS2の寅さん映画特集では、わが町温泉津(と津和野。ちなみに津和野は島根県です。山口県ではありません)を舞台にした「寅次郎恋やつれ」が放映されました。つまり結論は、「10月は島根県の月だ」。まあ、神在月ですからね。おや、そんなオチか。